薫る夕暮れ、わかりはじめる

読んだもの、観たもの、いただいたもの、詠んだ短歌などについての記録。

4月7日(月)付『近藤芳美集』第2巻『黒豹』

4月7日(月)

◇小学校の始業式。掃除して、お世話になっている仲良しのお友達を夕刻あずかる。

◇どうしようもなかった家を大分片付けて、よく人をまねいた春休みだった。こどもたちも楽しそうで、私も久しぶりにこういう安心をたっぷり味わった。できるだけ共用部分を今ぐらいに保って、この部屋で何をしようか毎日楽しく相談しながら過ごしたい。部屋が整っていないと、私もこどももテレビばかりを観てしまう。

◇あとは過剰を全部突っ込んだLDK以外の部屋を、何とか綺麗に。日本語学の本はやっぱり処分できない。講義や論文のためにつまみ食いのように読んできた手持ちの本もゆっくりはじめから読み返せたらいいなと思う。時間をかけてゆっくり解っていきたいことがいろいろある。本棚1本分の論文コピーもできれば処分する前にスキャンしたい。

 

◇読書◇

『近藤芳美集』第2巻『黒豹』

 読了。難しいなとやはり思った。でもこういう政治的な事柄は、詩的な心地の良さとは無縁の所で読んでいくのが誠実であるような気もする。起こった事件や自分はそういった出来事にどういう気分で向き合っているのかを、短歌という断片として淡々としかし詳細に語っていくことで、単純な主張ではないひとりの人間の複雑な内面と、彼の目を通して見た1960年代の世界との双方を、一枚のからくり絵のように表現し得ているのだと思う。どのような主張があるとしてもあらゆる暴力、紛争、パラノイアのような特定の思想の盛り上がりに対して懐疑的であるという近藤の基本的な立場が、端的な形で現れた歌集でもあった。

第2巻読了。

 

 ヘリコプター敵地に降りてなびくすすきいだく悲しみのすき透るまで

 心低く耐えて思想となすときを虚構の戦後史が崩れつつ

 川の橋平和の橋と名付けつつ人棲みともす焦土なりしを

 国の苦渋大河の流れ聞く如く深夜の北京放送もやむ

 吾と吾がことばに怯え眠る夜を雨降りしきる薔薇荒るる窓