薫る夕暮れ、わかりはじめる

読んだもの、観たもの、いただいたもの、詠んだ短歌などについての記録。

題詠blog2014前半(001~050)

《題詠blog2014前半(001~050)》

001:咲

職場へと送られながら室咲きのサボテンのごとくわらっていたり

002:飲

わたしならゆっくり食べる湯豆腐をひと飲みでたいらげたのだ、夫は

003:育

午後六時 色とりどりのパンプスが保育園の玄関にひしめく

004:瓶

こんな瓶が投げられて燃えていた日々の想像もつかぬままの不惑

005:返事

娘たちが返事をくれぬ真昼間に母という衣いちまい落とす

006:員

職引きしのち失った語彙として一函、鳥の子紙、楮紙、員数

007:快

「快い羽音いちばん」こども等が読み上ぐる椋鳩十淡し

008:原

ストリートビューで覗けば原発の入り口に白きいちにん立てり

009:いずれ

手のひらで時の重さを五度はかりいずれ会おうとメール結びぬ

010:倒

根元よりあの日倒れし柿の木の…kakierというフランス語あかるし

011:錆

君たちを世界から匿っている例えば錆びのある歩道橋から

012:延

かつて延命院貝塚と呼ばれいし場所で天然氷待ちおり

013:実

そういえば君のズボンのポケットからどんぐりの実の出ぬ秋だった

014:壇

着の身着のままいつものままで会いにゆく檀ふみが好きという母親に

015:艶

躑躅色のくちびるの艶を凝視せり子の胸の膨らみゆく冬に

016:捜

満員の快速 不意にひどいひどい家宅捜索されたくもなる

017:サービス

覆したきものとしてサービスエース取るものが勝つという勝つの定義

018:援

お姉ちゃんを叱れば反撃があって妹の援護射撃まで来る

019:妹

六度目の冬に向き合う妹の水底の貝のようなだんまり

020:央

草原ではじめた折り句ゆきゆきて香央理さんの央でゆきづまりたり

021:折

沈んでも沈んでも戻らぬ言葉からだを折りたたんで眠りぬ

022:関東

東京でも日本でもなくこの街を関東と呼ぶときのあかるさ

023:保

唐突にしあわせは来るポーチへと君の保険証をしまう時などに

024:維

たずねたきたよりたき弱き朝には王維詩集を書架よりえらぶ

025:がっかり

がっかりという顔の上手き親友を拾いし日、からの平行世界

026:応

戦争といえば応仁の乱であるたとえばそういう職掌だった

027:炎

絵が好きなおまえじゃないが炎の絵をおまえが描いたことのないこと

028:塗

実に妙な毎日だった塗り絵などいくらでも買ってやった暮らしは

029:スープ

買うべきか買うべきじゃないか逡巡しオニオンスープを買って帰りぬ

030:噴

噴煙をあげる山々の映像を眺める他のなき冬である

031:栗

給食やおやつの話聴きながら御栗林をあるいてゆきぬ

032:叩

とらえどころなきものの萌芽おさなごが人を叩きたがる冬である

033:連絡

風邪をひきし子を休ませるためですら連絡帳を託す人が要る

034:由

泣いている理由を問えどおさなごはひたすらに腹を蹴り上げるばかり

035:因

何者にもならないといえば原因とずっと同衾ができるのですか

036:ふわり

スカートをふわり揺らして歩み行く北の魔女の忠実なるしもべ

037:宴

兼業の母の子であれば宴会も飲み会も知りつつ育ちゆく

038:華

栄達も栄華もからっきし要らぬぜーんぶ投げて君に帰りたし

039:鮭

いつの間にか作らなくなった献立に筑前煮茶碗蒸し鮭チャーハン

040:跡

はつふゆの遊歩道にはなないろの足跡きみと踏みながらゆく

041:一生

ああ、これは不実、と思う一生という言葉不意に口に出せば

042:尊

出来事が文字を陵辱することのありてたとえば尊の文字など

043:ヤフー

YouTubeの動画をヤフーで検索するおさなごの夜土曜日曜

044:発

どうか君が発熱をしませんように死んでしまう、ととてもこわいから

045:桑

この街に生きるさびしさ桑畑を桑の実をみたことのないこと

046:賛

かぎりなくさびしき道だ賛成とも反対とも君に聞かぬ旅

047:持

もう母に期待をしなくなって子が遠足の持ち物をあつめる

048:センター

家庭教師センターへ夫を見送りぬ裏道で抱擁せし後に

049:岬

まさに突き破って生まれたというべき岬のような額の君だ

050:頻

震度6が頻発をするこの島のこの時代に子らを産みてあり