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薫る夕暮れ、わかりはじめる

読んだもの、観たもの、いただいたもの、詠んだ短歌などについての記録。

冬瓜(「未来」2015年4月号掲載作品)

冬瓜

十年の熾火抱えて冬瓜のさみどり君だけを割ると決める
「父はね」と夫が語ればたちまちに初夏の光を宿す胎
花びらを顔へ受けしよ空の破片硝子の羽と否定しながら
父慕う歌流るれば獣園のおまえはガゼル私は駝鳥
故郷に夫と立つたび夫の名を小さく忘れゆくのかも知れず
もっと詩を語り合わねば真南へなだれむと分水嶺を水は
逃げたがる子をぎゅっと捕まえながら感情をひとつ鳥葬にする
穏やかなこの人の所作を丹念に真似て生きむよ失語の今日を
公園の道にあしあとが描いてある夫がゆき子がゆき私がゆく