薫る夕暮れ、わかりはじめる

読んだもの、観たもの、いただいたもの、詠んだ短歌などについての記録。

2015-01-01から1年間の記事一覧

黒瀬珂瀾『蓮喰ひ人の日記』

この週末に黒瀬珂瀾さんの第三歌集『蓮喰ひ人の日記』を読み返す機会があったので、この歌集について私が今感じることをそろそろ書き記しておこう、と思う。 今回の黒瀬さんの歌集は1年1ヶ月に及ぶアイルランド、イギリス滞在の期間に書かれたもので、タイト…

La Rose et Les Planétes――『星の王子様』のモチーフを借りながら――

2015年9月19日に大阪・十三で開かれたマラソン・リーディング2015 in 大阪 with さくらこカフェ(@カフェスロー大阪)で朗読をさせていただきました。素晴らしい歌人の方々の間に交ざって朗読させていただけて、とても貴重な体験でした。 その際に朗読させ…

正岡子規『墨汁一滴』

正岡子規『墨汁一滴』(明治34年)から、新しい日本語の表記に関する記述を。「漢字廃止、羅馬(ローマ)字採用または新字製造などの遼遠(りょうえん)なる論は知らず。余は極めて手近なる必要に応ぜんために至急新仮字(しんかな)の製造を望む者なり。そ…

冬瓜(「未来」2015年4月号掲載作品)

冬瓜 十年の熾火抱えて冬瓜のさみどり君だけを割ると決める 「父はね」と夫が語ればたちまちに初夏の光を宿す胎 花びらを顔へ受けしよ空の破片硝子の羽と否定しながら 父慕う歌流るれば獣園のおまえはガゼル私は駝鳥 故郷に夫と立つたび夫の名を小さく忘れゆ…

井辻朱美『クラウド』

『水晶散歩』以来約10年ぶりの刊行となる、著者の第6歌集。 散文の論理ではない、詩の理不尽な結合力と飛躍力。 大人の「象徴界」ではなく、子どもの「想像界」。 最終的には、そこへ還ってゆくべきなのではないか、そんなふうに思ったのです。 そう語る「あ…